根っ株について


根ッ株とは、樹の株のこと。

北海道の支笏湖畔の森で一本の大きな株に出会いました。
暗い森の中、一筋の木漏れ日に向かって歩いてゆくと、光はその株の上の小さなドングリの木を照らしていました。
朽ちた株に張り付いたコケは、水をたっぷり含み、株の中で小さなキノコや虫達は育まれていました。

大木がひとつの大きな命を終え、今度は小さな命たちを育てるゆりかごに。
株は樹がそこに生きてきた証であり、何かをいつも語りかけてきます。
勇気づけられたり、自分の傲慢さを教えてくれたり。
ずっと森に立ち続けているその存在が、気になってしかたがなくなりました。


 

キャンプ場アトリエ

 

30代のはじめの4年間、春から秋まで支笏湖でキャンプし制作を続けました。
私の絵には、よくキタキツネやリス、フクロウ、虫などが登場します。
根っ株は、動物たちに家や食糧の貯蔵庫として、あるいは身を隠す場所などとして提供します。
株の周りの世界で、命は失われたり新たに立ち上がったり、形を変えながらいつも一生懸命です。

ヒグマの危険や自然の厳しさが隣り合わせの森で、根っ株や倒木の中に見つけたささやかな安らぎ。

厳しくも優しい根っ株のことを伝えたくなり、感じたそのままの姿を描き続けました。

 

巨木の根っ株は朽ちて森の土になるまでの悠久の歳月、常に新しい命を育て見守る大きな存在です。


小島加奈子